『コリオレイナス』(唐沢寿明、白石加代子出演/蜷川幸雄演出)
2007.08.25 (22:25) シェイクスピアTB(0)CM(0)
 NHK教育「芸術への招待」にて鑑賞。オープニングでは鏡(マジックミラー)が幕の代わりとなっており、さらに舞台の大半を占める大階段の左右にもまた鏡が張られております。また、作品はローマが舞台なのですが、演じ手が日本人であること(つまり、あまりに史実に忠実に演じようとして『鹿鳴館』状態になってしまうリスク)を意識しているのか、セットや衣装にも和洋折衷の趣きが凝らされているようです。具体的に言えば、軍人達が腰に差しているのも西洋風の剣ではなく、日本刀風の曲刀でした(そういえば勝村政信演じるオーフィディアスの足元は今の時代に履くようなブーツでした)。こういう手法は何かしらのコンプレックスの類が前に出すぎたりして失敗することがあるのですが、個人的には「失敗かな」とまでは思いませんでした。

 もっとも、観始めた当初は衣装もヘンだと思っていたし台詞の間もなんだかキツキツで窮屈だしBGMとか市民や軍人達が階段下りる音とかやたらうるせえしで、どういうわけか半ば泣き出しそうになっていたぐらいでしたが、40分が過ぎたぐらい、客席からも「笑い」が出てくるようなシーンになってからはそういう気持ちが次第に弛緩されていったように思います。この作品も以前触れた本場の「オセロー」同様悲劇なのですが、悲劇だからこそ笑いというものは大事なのだな、とつくづく思います。悲劇だからと言ってただ悲しませるだけでは、エンターテイメントにはならないのです(もっとも、私が悲しくなっていた事情は物語と別のところにあったわけですが……)。そこからはぐいぐい引き込まれ、やはり訳語やBGMの在り方にちょこちょこ疑問を抱えたりもしましたが、楽しく拝見させていただきました。

 唐沢コリオレイナスもかっこよかったですが(個人的に、髪の短い唐沢というのが新鮮だったというのもあります)、それ以上にすごいな、と思ったのは、コリオレイナスの母(白石)がコリオレイナスに訴えている状況を見下ろしている勝村オーフィディアスの表情。コリオレイナスとその母とのやりとりの間、オーフィディアスは相当の時間を無言で見下ろしていなければいけないのですが、もちろんただの棒立ちでは済まされない以上、ある意味では喋っていることよりも大変なことじゃないかと思いました。その後の芝居も含め、唐沢とはまた違う良さを感じることができました(そういえばカーテンコールのとき、勝村の感極まったような表情が印象的でした)。

(文中敬称略)
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